「醍醐味」という、味があります。
時間を経て変化していく、ミルク。
「読書の醍醐味を知る」、「このポテンシャルがこの車の醍醐味だ」と、「本当に面白い」時、「神髄」に触れた時、この言葉を私たちは使います。「醍醐味」は、実は仏教用語。お釈迦さまの入滅を書いた「涅槃経」に、その語源が記されています。ミルクを精製するとき、時間が経つにつれて味が深まっていきます。その際、乳味(にゅうみ)、酪味(らくみ)、生酥味(しょうそみ)、熟酥味(じゅくそみ)、そして醍醐味へと五段階に変化します。それは五味と呼ばれ、最後にできる、最上の味が「醍醐味」です。
究極の味は、最上の教えへ。
「醍醐味」。究極の味は、「最上の教え」に例えられました。そして「涅槃」に例えられ、人間の諸悪や苦しみの根源とされる三毒を滅して、さとりの、最高の境地=「涅槃」になる。そんな意味としても仏教では用いられています。 「最上の教え」とは、「涅槃」とは。「醍醐味」の真意を知らずに、私たちは使っています。言葉の、真の意味を知る。それが、これからの人生を賢く過ごすコツ。ところで「醍醐味」は、どんな味かには諸説ありです。バターとヨーグルトの中間のような味、チーズのような味など、これはこれで楽しい発見がありそうですね。ひとつの言葉には、多くの別世界があるのです。