1. HOME
  2. ともに親鸞
  3. ほんとうの親鸞 島田裕巳

ほんとうの親鸞 島田裕巳

「親鸞は特別な人間ではない。超人でも巨人でもなく、普通の人間である。」と著者は語る。宗教思想史におけるスーパースターであり、カリスマ的存在といわれる親鸞。古今東西にファンがいて、彼の虜になった知識人は枚挙にいとまがない。しかし本書は、そんな既存の親鸞像に一石を投じる。超人として捉え、超人像に合致する資料を選択し、その線に沿って資料を解釈して語られることが多い親鸞だが、それが本当の姿なのだろうかと。資料が極めて少ないため、人物像も、生涯も、思想もひどくあいまいな親鸞。それゆえ、人々は、それぞれが勝手に独自の親鸞像を作り上げた。実像があいまいだからこそ、虚像も容易に作ることができる。カリスマとしての親鸞も、実は一つの親鸞像に過ぎない。では、「ほんとうの親鸞」とはどういったものか? 不確かな資料と確かな資料を選り分けつつ、虚像を破壊し、一歩でもその実像に近づこうとして書かれた本書。今まで正面からしか見えていなかった親鸞を、別アングルから丁寧に映し出してゆく。例えば、親鸞は自分の教えではなく、あくまで法然の教えを伝える媒介者(メディア)の役割に徹していたが、その一方で法然の専修念仏の教えに素直に従うことができずにいたこと。「念仏をひたすら唱え、阿弥陀仏にすべてをゆだねるだけで本当に救われるのか」と疑い、気がつくと、自らで救われようとする自力の念が立ち現れては葛藤した…。正しい信仰の道を求めて、生涯にわたって迷い、悩み続けた親鸞。そこから見えてくるのは、庶民には近寄りがたい超人としての親鸞ではなく、人間味あふれ、親しみのもてる「普通の人」としての親鸞。本書を読めば、これまでの親鸞像とは大きく異なる新しい親鸞が見えてくる。



講談社/講談社現代新書 760円(税抜)