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① 親鸞聖人の家柄

「親鸞聖人繪傳」専修寺関東別院 所蔵

古今の聖人偉人の中で、親鸞聖人ほど自分や自分の家族について語ることの少なかった人は珍しいのではないでしょうか。自分の信心については懇切丁寧に著書で説明している親鸞聖人ですが、自分の生まれた家筋や父母、妻子については何一つ語っておりません。親鸞聖人は藤原氏一門の日野家の直系だという説があります。日野氏という家柄は、室町時代になると、将軍家と深い縁を結んで、たいへん権力をふるうようになるので有名な家ですが、親鸞聖人が生まれた当時は、まだ政界の主流からはずれ、それほど勢力はない時代です。しかし、決して貧乏貴族などと言われるような落ちぶれたものではありませんでした。親鸞聖人のお父さんは、皇太后宮大進(だいしん)という役についていました。大臣ほどでないにせよ貴族としてきちんとした家柄であったことは間違いありません。それは「親鸞聖人繪傳」の情景にもよく示されています。
9 歳の親鸞聖人は、伯父の若狭守範綱(わかさのかみのりつな)に付き添ってもらって慈円僧正を訪れ、ここで得度(出家の儀式)をするのですが、門前には親鸞聖人が乗ってきた御所車 (牛車)がとまっています。この貴族社会特有の乗り物は、それだけで貴族的なムードを漂わせています。ここに着いてからだいぶ時間がたったのでしょうか、車を引いてきた牛は解き放たれ、従者が4~5人焚き火をしながら主人を待っていて、のどかな雰囲気です。そして、範綱卿の従者でしょう、狩衣(かりぎぬ)に烏帽子(えぼし)姿の武者らしい男が、幾分か威厳を示しながらその光景を眺めています。爛漫と咲きほこる桜を背景としたこの雅で華やかな光景は、貴族の嫡男として育った親鸞聖人の幼児の世界を見事に表現しています。