すべての人を救う、他力
1181年、平清盛が亡くなった年。親鸞聖人は出家して比叡山に登り、約20年間の厳しい修行を積みます。しかし、自力での修行に限界を感じ、山を下りることになりました。自身の内面を見つめ直し、自力修行に絶望を感じたのかもしれません。その目の前に現われたのが、信心他力を唱える法然上人でした。信心他力は、親鸞聖人にどう映ったのでしょうか。
これは親鸞聖人の書いた「浄土高僧和讃」にある和讃です。和讃に出てくる“一心”とは、お釈迦様の説く阿弥陀仏の願いと、その成就による他力に対して、二心なく疑いのない心のことで、真実の信心といわれています。他力の信心とは、阿弥陀仏の願いを聞いて疑いのない心。私たちの煩悩に汚れた心でも決して壊れることのない、金剛の如き信心であり、その力はあらゆる人を浄土に導く、救いの力なのです。この他力は、すべての人を救っていこうという慈悲深い菩提心にも通じると、親鸞聖人は、法然上人との出会いから感じ取ったのかもしれません。