親鸞をよむ 山折哲雄
親鸞を読み始めて半世紀以上、親鸞とは何を考えながら生きていたのだろうと、その思考をひたすらにたどった。やがて、親鸞の顔の表情が気になりだした。上半身から立ち昇る汗の匂いを嗅ぎ、胸の奥から聞こえてくる心臓の鼓動に耳をすますようになった。布教や旅の中で歩く親鸞、村の中へ入っていく親鸞、思索に耽り、目をらんらんと輝かせる親鸞……。日常生活の中で、かれはどんなことを感じながら生きていたのだろうか。親鸞を「あたま」ではなく、「からだ」で読んでみよう。そんな思いから本書は生まれた。残った筆跡や歩いた道筋、主著『教行信証』、和讃のことばから、親鸞その人との対面を試みた。さらに、ブッダや同時代に生きた道元、日蓮と丁寧に比較することで、ひとりの人間、親鸞の姿はより鮮明に立ち上がってくる。考え、悩み、生き抜いた親鸞の息づかいと足音が、ここに聞こえてくる。
岩波書店 / 岩波新書 740円(税抜)