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⑦ 信心の論争

「親鸞聖人繪傳」専修寺関東別院 所蔵

あるとき、法然上人の弟子たちの間で、信心をめぐる論争が起こります。これは、「信心諍論(しんじんじょうろん)」と呼ばれるものです。親鸞聖人が「先生(法然上人)の信心と私の信心は同じだ」と発言したことがきっかけで、有力な弟子たちとの間で論争へと発展したのです。弟子のくせに先生と同じだなんて生意気だと激しく非難された親鸞聖人は、「確かに、先生は私よりも知識があり、そこに差があることは認めます。しかし、浄土に生まれるという信心において、私と先生の間に差があるようには思えません」と主張して譲りません。それを聞いていた法然上人が、「善信(親鸞聖人)の言う通りです。信心にちがいがあるというのは、自力で得た信心の場合です。他力の信心は、阿弥陀仏から平等にいただいた信心。私と善信の間で差はないのです。もし私の信心とちがう人は、私がいく極楽浄土へ往くことはできないでしょう」と言い、論争に決着をつけました。親鸞聖人を非難した弟子たちは、みな悔しがりつつ頭を下げたのでした。他力の信心の核心について触れるこの逸話から、親鸞聖人が行き着く絶対他力の礎が見て取れるのではないでしょうか。